interview

Chef
山口 祐亮 Yusuke Yamaguchi

幼少の頃から料理に興味をもち、専門学校を卒業後は京都ブライトンホテルにて料理人としてのキャリアをスタート。
本場フランスのレストラン「La Petite Cour」などで修行を積み、2017年より「アカガネリゾート京都東山1925」でシェフを務める。
旬食材のポテンシャルを生かした、シンプルでありながらも細部までこだわった料理には、誠実な人柄が表れている。

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山口シェフが料理人を目指そうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
自分の場合は両親が共働きで、幼いころから自分で料理を作ってたんですよね。家に帰ってもご飯がないので、自分で作らざるを得ない、という環境でした。父も料理が好きで一緒に作ったり、テレビでやっていた「料理の鉄人」という番組を見たりするうちに料理に対する興味がどんどん湧いてきて、料理が自分の一部のようになっていったんです。高校生くらいになると友人にも料理を振る舞う機会が増えて、気が付いたら料理人の世界に足を踏み入れていました。高校の卒業文集では、将来の夢を「ホテルのコック」と書いていたくらいですから。
高校生からの夢を叶えられたのですね。料理にもさまざまな種類がありますが、なぜフランス料理を専門にしようと?
もともとフランスの建物や文化に憧れがあって、料理人になるならフランス料理にしようと決めていたんです。当時は勉強不足だったのもありますが、和食よりフランス料理のほうが華やかに見えたんですよ。自分が小さいころはよく家族でデパートに行っていたんですが、そこで目にするブランドのバッグとか店内の装飾がとてもきらびやかだったのを覚えています。おそらくそういう経験もあって、フランスってどんな国だろうと興味を持ったことが今につながっているんだと思います。調理師の専門学校では1年目で和洋中すべての料理を学びますが、フランス料理はソース作りから盛り付けに至るまで細部にも気を配るので、自分の性分に合っていると感じました。フランス料理の技術は、イタリアンなど他の洋食にも応用できますしね。
専門学校卒業後はどうやって経験を積まれたのでしょうか?
自分はホテル内の宴会場やレストラン、カフェやバルなど様々な業態のレストランで働いた経験があります。フランス料理だけでなく、デザートやイタリアンも作っていましたし、ワーキングホリデーを活用してフランス現地のレストランで働いた経験もあります。いろいろ経験した中でも、専門学校卒業後に就職したホテルが一番印象深く、今に活きる経験をさせてもらったなと思います。ホテルでは宴会場でたくさんの料理を一度に作る大量調理や、レストランで洗練された料理も担当していました。ホテルで教えられたのは、いかに先輩方が気持ちよく仕事をできるようフォローするか、ということです。例えば、自分の仕事をやりながら、次に先輩が何をしようとしているか、何が必要なのかを察して持っていく、とかですね。先輩方の動きを意識するうちに、目の前の自分の仕事に集中しながら周囲の状況を把握できるようになりました。それって、自分がシェフとしてお客様と接する上でとても大事なことなんです。お客様が人を探すようなしぐさをしたり、手を挙げようとしたりするアクションに気付くこと、お客様が何を求めているかを察して用意するなど、お客様のアウトプットの前に自分が動くことができればよりよいサービスにつながります。当時は辛かったですが今となってはいい経験です。
経験値が多いからこそ、苦労も多かったのではないかと思います。山口シェフが料理人を続けるモチベーションや原動力はどこにあるのでしょう?
自分が作った料理で喜んでもらえる、それが今まで料理人を続けられた原動力ですね。実はホテルの仕事が辛すぎて、料理人を辞めるつもりでフランスにワーキングホリデーに行ったんです。でもフランスで「料理人をやっていた」と言うとすごい尊敬の眼差しで見られるんですよ。もう日本の比じゃないくらいに。フランスでは本当に料理人って憧れの職業みたいで、日本とのギャップを感じました。それと同時に、フランスではホームパーティーをする機会も多くて、自分が作ったもので喜んでくれる人がいるって事実に改めて気付いたんですね。それを見たときに、なんだか原点に返った気がしました。自分が高校生のときに、友人に料理を振る舞って喜んでもらった思い出とか、家族に作った思い出がよみがえってきて、自分はこの瞬間のために料理を作りたかったんだな、と感じたんです。人が集まる場所には料理があって、料理がおいしければ笑顔になるんです。そういった空間を作れるのが料理の魅力だと思いますし、料理人って目指す人はいても続ける人は少ない世界。だったら自分が続けることで自分の価値も上げていけるんじゃないか、そしてもっといろんな人を笑顔にすることができるんじゃないか、その思いが自分の料理を作り続ける原動力ですね。
山口シェフの原点を垣間見ることができました。今はどんなときに仕事のやりがいや楽しさを感じますか?
特にシェフになってからより色濃くなったんですが、自分が考えた料理を召し上がっていただいたときに、「おいしい」という言葉を聞けるとやりがいを感じますね。自分はお客様の目の前で料理を作ったり仕上げをしたりする、ゲストルームの担当もさせていただいているので、お客様の喜ぶ顔を直接見ることができるのは本当に嬉しいです。料理では、ちょうどいい大きさのベビーリーフや花が手に入ったときやオードブルの配色、お肉を切ったときのグラデーションが整っているなど、自分の思うクオリティに達しているといい料理が作れたな、と達成感がありますね。また、若いころは辛いだけで楽しめなかったのですが、忙しい時でも会場全体のリズムが合って、スムーズに料理が仕上がっていくときはアドレナリンが出て楽しいですね。キッチン、サービス、そしてお客様の気持ちがひとつになって会場全体が盛り上がっている、そんな感覚になります。
アカガネリゾートにはキッチンメンバーも多く在籍されていますが、お客様に最高の料理を提供するために意識していることをお聞きしたいです。
料理人の本質でもあると思うんですが、いかにお客様に100%の料理を提供できるかっていう点がベースになっています。1℃でも熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいままお客様にサーブする、そのためにどう動くべきかという点は常に考えています。アカガネリゾートとして、お客様に提供できる価値を最大限引き出すために、キッチンメンバーはもちろん、サービスメンバーとも連携する必要があります。サービスメンバーが料理をベストな状態でサーブできないのであれば、自分が直接お客様に届けますし、料理が遅れているのであればサービスメンバーがキッチンを手伝ってくれることもあります。その瞬間でベストなものを提供するためにチームワークはとても大切なので、常にまわりの状況を見ながら判断するようにはしていますね。
LE UN アカガネリゾート京都東山1925という場をスタッフ全員で作り上げているのですね。また、LE UNアカガネリゾート京都東山1925は「ヘルシー&ビューティー」がコンセプトですが、山口シェフのこだわりはなんでしょうか?
京都という土地柄もあるかもしれませんが、お客様が求めているのがまさに「ヘルシー」なフランス料理なんですよね。クラシックなフランス料理は、バターをたくさん使ったり、濃厚なソースを使ったりしていて少し重い感じがしてしまうんですが、流行もあってか、今はそういったクラシックなフランス料理は好まれないんです。アカガネリゾートでは旬の食材をメインに使用していますが、旬の食材というのはそれだけでポテンシャルが高く、いろいろ飾りつけなくても十分に魅力的なんですね。自分が表現したいものをシンプルに表現する。シェフの腕の見せ所でもあり難しい部分でもありますが、そうすることで食材の魅力を最大限引き出すことがヘルシーにつながっていると思います。また料理人の発言としてはどうかと思いますが、料理はあくまで特別な記念日を演出する黒子のような役割なんですよね。何かの空間を演出するアイテムの一つで、それがあると笑顔になれる、幸せになれる、料理ってそんな存在だと思うんです。その人の美しい思い出、楽しい思い出になることがビューティーにつながっているのかな、と。実はレストランの語源は、回復させる、良い状態にする、という意味です。体調不良の人へ体にいい食事を提供するという、病院のような役割を果たしていた時代もありました。そういった意味を込めて、自分の中ではシンプルかつおいしくて笑顔になれること、そんな「ヘルシー&ビューティー」を表現していきたいです。
山口シェフのこだわりが込められた料理、ぜひ食べてみたいです。またLE UNアカガネリゾート京都東山1925は大正時代から続く建造物ですが、だからこそ伝えられる価値はありますか?
歴史ある建造物なので、内装や歴史を残していかないといけない、というのはもちろんありますね。建物は大正14年に建造されましたが、もともとは江戸時代から続く、日本を代表する銅加工メーカーのオーナーの邸宅だったんです。内装が美しいのはもちろん、雨どいや屋根などの外観に至るまで、贅沢に銅があしらわれているんですよ。アカガネリゾートのアカガネは赤銅色(あかがねいろ)を指していますが、赤銅と銅が酸化した青銅のコントラストは本当に美しく、残していかないといけないなと思います。また、装飾だけでなく、アカガネに来店されたお客様がお帰りになるまでの時間を、特別で思い出深いものにしてもらう、来てよかったと思っていただくのがアカガネリゾートで過ごす価値なのかなと思っています。一番最初にお客様をお迎えするスタッフから始まり、建造物の内装や歴史、料理を楽しんでいただくことで、これからも特別な場所として残していきたいですね。その中で料理人ができることは、100%最高の料理を追求し続けること。それを一番に考えています。
まさに、料理で人が笑顔になる場、なんですね。山口シェフはどんな想いでキッチンに立たれているのでしょうか?
料理人としては野菜ひとつでもいいし、ソースの味でもいいんですが、一皿でもお客様の記憶に残ってもらえたら、という思いはありますね。また、これは自分のエゴでもあるかもしれませんが、お客様がアカガネで過ごす時間を何よりもいいものにしていただきたいです。自分はKIWAMIというゲストスペースで対面で料理を提供させていただいておりますので、お客様の目の前で仕上げをする機会も多いんですよ。エンターテインメントとして、おいしく料理を召し上がっていただくのも特別な時間の過ごし方ですし、そこで「こんな料理は見たことがない」「味わったことがない」と言っていただけるのは料理人冥利に尽きますね。ただ、たとえそれが記憶に残らなくても、なんとなくの思い出として温かいものが残っている、温かい時間だった、そんな風に思っていただきたいと考えています。それは、そこに料理があって、料理や場所の雰囲気、サービスに100%以上の価値があるからこそ生まれるものだと思うんです。そういった特別な時間を届けられるように、これからも料理の価値を高めていきたいと思っています。

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